トヨタ自動車株式会社

人材開発部 人事部 主任 本多 純子 様

社内アドバイザーを育成し
「自ら学び、教える」風土を醸成

—人材育成に関する基本的な考え方と、研修の位置付けについてお聞かせください。

「モノづくりは人づくり」という考えの下、人材育成には力を入れています。日常の業務を通じたOJTをベースとしたうえで、OFF-JTとして様々な研修を用意しています。研修については、1年目、3年目、中堅、基幹職、幹部職など、キャリアの節目、節目に階層別研修を実施。全社員に共通して身に着けてほしい心構えや仕事の進め方などを、繰り返し教えています。その代表的なものが、「TBP(ToyotaBusiness Practice)」と呼ばれる8ステップの「トヨタ式問題解決」です。

TBPは社員一人ひとりが日々の仕事のなかで実践していくものですが、研修では、さらなる浸透を図るために、アドバイザーと呼ばれる社内講師を育成し、受講者を指導してもらいます。受講者は、研修で学んだことを持ち帰り、自らの職場で実践していく形になります。

また、階層別研修は同じ階層の社員が一堂に会する貴重な機会なので、いま会社が重視している課題や目指している方向性を、メッセージとして広く社員に伝えられる場としても機能しています。同時に、我々人事にとっては、それぞれの現場で起こっている変化を吸い上げる場にもなっています。多くの社員の顔を見ながら、職場の現状を把握し、次の施策へとつなげています。

—具体的な研修内容を教えてください。

各階層で異なりますが、プレセナさんにご協力をいただいている「3年基礎固め研修」は、入社3年目の社員を対象とした実践型の研修プログラムです。実際に自分の業務のなかから課題を見つけ、問題解決に取り組むことで、TBPという仕事の仕方を体得し、達成感や成長実感を得てもらうことを狙いとしています。

受講者は、職場の上司と社内アドバイザーのサポートを受けながら、1月〜12月の12カ月間に渡ってTBPの8ステップを実践していきます。その間、要所要所で課題を提出してもらい、折り返し地点の6月にはアドバイザーによる研修を実施。グループに分かれて、自分たちの課題を相互チェックするとともに、アドバイザーが個別面談を行います。上司とは異なり直接的なしがらみのない社内の先輩から、客観的な視点で実体験を踏まえたアドバイスがもらえるのは、社内講師ならではのメリットだと思います。「社内にはこんなに素敵な先輩がいるのだ」と、ロールモデルに出会うという意味でも、3年目の社員にとって重要だと考えています。

そして研修の最後には、部ごとに職場発表会を開き、取り組みの成果を発表します。3年目の社員にとっては、部長に対して1人で正式な業務報告をするのはこれが初めてとなる人も少なくありません。その意味で、職場発表会は12カ月の締め括りであると同時に、入社から3年という節目の集大成でもあるのです。そのなかでプレセナさんには、アドバイザーに対する研修と、eラーニングや教材の開発をお願いしています。

—社内アドバイザーの育成を重視するなかで、外部のパートナー企業に求めるものは何でしょうか。

「トヨタの問題解決」はトヨタの仕事の仕方であり、これを標準化・体系化して全社員に伝えなければなりません。そのために、パートナー企業には、「能力面」と「姿勢面」それぞれで期待するものがあります。

「能力面」で期待することは3つです。それは、ぼんやりとした概念をきっちりと「言語化する力」、仕事の進め方や考え方などの手順をしっかりと「構造化する力」、トヨタの社内で実際にありそうな「実務の場面をイメージする力」、です。このいずれが欠けていても、トヨタの問題解決の教材開発は出来ません。

また「姿勢面」で最も重要なのは、「カイゼンに対する執着心」を持っていることです。高いプロ意識を持ってトヨタと対等に、徹底的にコミュニケーションしながら、限りなき改善を続けられることが、パートナー企業には求められています。

—最後に、人材育成に関して、「これは大事だ」と考えていることをお話下さい。

特に研修における指導の仕方やファシリテーションスキルの習得に関しては、教育のプロフェッショナルの力をお借りできればと考えています。プレセナさんには長年、階層別研修をサポートしていただいており、TBPの理解の深さについては、全面的に信頼しています。その上で、一方的に方法論を押しつけたりせず、毎回、その年の強化ポイントを一緒に考えてもらえるのは、とてもありがたく思います。

今回は、TBPの基礎知識を学べるeラーニングのコンテンツ制作をお願いしました。従来、集合研修で行っていたものを、効率化のためeラーニングに切り替えたのですが、いつでも簡潔に振り返りができるようなものにしたかったので、コンテンツの内容から表現方法まで、いろいろと工夫を凝らしていただきました。

TBPの内容は大きく変化するものではありませんが、時代や状況とともに教える対象である人が変われば、教え方も常によりよい方法を考えていかなくてはなりません。階層別研修のように一見不変的な研修でも、毎年、毎年、どういう研修であるべきか、改善を加えています。ともに悩み、ともに考え、新しいチャレンジに一緒に取り組んでくれるパートナーは、とても心強い存在だと感じています。

本多 純子様、お忙しいところをどうも有り難うございました。
(聞き手 荻野 裕規)

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